静かな夜明け

  夜明け前の静かな時間。
  しん、と静まり返ったドッグに灯りが付いていた。
  そこには先程まで作業をしていたらしく、クレーンが停まっており、大量の鉄鋼が積んである。
  そこの片隅のベンチで、多岐川佑華はうつらうつらと眠っていた。
  膝にはたくさん迷って線を引いた戦闘機の設計図があった。
  夢を見ていた。

「俺、飛行機大好きなんだ。ロボも好きだけど」
  透けるような空の青の下、小カトーは笑っていた。
  佑華は隣で寝転がって小カトーの横顔を見ていた。
  二人で並んで芝生に寝転がり、飛行場で空を眺めていたのだ。
「飛行機、免許取るの?」
  佑華は聞く。
  また飛行機が一機空に上がった。
  飛行機雲がしゅるしゅると空に伸びていく。
「ん」
  小カトーは頷く。
「多分ね。家業だし」
「そっかー。取ったら乗せてくれる? ショウ君運転してるの、乗ってみたい」
  小カトーはじっと佑華を見た。
  次の瞬間優しく顔をほころばせた。
「OK」
  約束。
  その後、二人で指切りした。

開発コンセプト

先の黒麒麟藩国との戦闘により洗われたFEGの欠点は、制空権の獲得ができない事であった。待つ事でしか敵と戦えないのだから、待つだけだと先日の戦いのように犠牲者が出る。よってこちらから打って出る事ができる戦闘機が必要となってくる訳である。制空権獲得のできる仕様として

1:航空・低軌道宇宙での戦闘行為の可能
2:レーダーによる長距離索敵行為の可能
3:レーザー兵器、ロケットミサイルによる超長距離、長距離戦闘行為の可能
4:機銃による中近距離戦闘行為の可能
5:機動力による回避行動の可能と搭乗員生還率向上のための機体強化向上の両立

以上5点を挙げて開発が進められた。
結果、機動力と機体の強化の両立を突き詰めた所、機体全体の小型化する事で落ち着いた。また機動力向上による機体の不安定さを咆月が精霊回路発動の為組み込まれた制御装置の応用によりバランスを保つ事に成功した。

 

2008 yuuka takigawa

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