静かな夜明け
夜明け前の静かな時間。
しん、と静まり返ったドッグに灯りが付いていた。
そこには先程まで作業をしていたらしく、クレーンが停まっており、大量の鉄鋼が積んである。
そこの片隅のベンチで、多岐川佑華はうつらうつらと眠っていた。
膝にはたくさん迷って線を引いた戦闘機の設計図があった。
夢を見ていた。
「俺、飛行機大好きなんだ。ロボも好きだけど」
透けるような空の青の下、小カトーは笑っていた。
佑華は隣で寝転がって小カトーの横顔を見ていた。
二人で並んで芝生に寝転がり、飛行場で空を眺めていたのだ。
「飛行機、免許取るの?」
佑華は聞く。
また飛行機が一機空に上がった。
飛行機雲がしゅるしゅると空に伸びていく。
「ん」
小カトーは頷く。
「多分ね。家業だし」
「そっかー。取ったら乗せてくれる? ショウ君運転してるの、乗ってみたい」
小カトーはじっと佑華を見た。
次の瞬間優しく顔をほころばせた。
「OK」
約束。
その後、二人で指切りした。
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