昼/会議室にて

 その日、FEG政庁の会議室では首脳陣会議が行われていた。
議題はアイドレスの開発に関することである。

是空:「予定通り緊急投擲展開軍と共和国大統領はSHQ、帰還用定期券はHQで通過だったな」
コゼット:「予定は通常通過でしたよ?。お父さんの国の人たちは、いつも頑張りすぎです」

最近FEGに逗留することとなったコゼットも首脳陣会議に顔を並べている。主に内政面を担当しており、効果的な提案をいくつも行い逗留期間は短いながら大きな成果を挙げ始めていた。
ちなみに、彼女が行った提案の中のささやかな一つに首脳陣会議は、コゼットが淹れたお茶を飲みながら行うというものがあった。

是空:「いつもお茶淹れてもらって悪いね」
コゼット:「美味しいですか?」
是空:「もちろん。さて、話を戻すが次は、WSO強化でナイスバディを開発して、その次はどうするっかなー。何か意見ある?」
謎の声:「それならメカを作りましょう!」

突然会議室の扉を開け姿を現したのは、FEGの誇るI=Dデザイナーであるヴァンダナである。
どうやらメカの開発を直訴するため、会議室の外に待機していたらしい。その証拠に企画書と書かれた紙の束を抱えていた。
会議参加者全員に企画書を配り終え、早速プレゼンを始めるヴァンダナ。小型のプレゼン機器一式を持ち込む力の入れようである。

ヴァンダナ:「最近のFEGはメカ成分が足りないと思います!」

開口一番がこの発言であった。
確かに、純粋なI=DやWDの自国開発は、しばらくの間行われておらず、一般的に想像されるメカの開発からFEGは離れていることは確かである。
通常なら、こういったプレゼンは首脳陣会議で新アイドレスの方針が大まかに決定された後に公募されるのが手順であったが、メカ開発に情熱を注ぐ男ヴァンダナ。彼を突き動かす情熱は公募まで待っていられなかったらしい。
対する首脳陣は、こういう事もたまには良いよねーとか話しながら、会議に乱入してきたヴァンダナのプレゼンを聞くつもりになったようだ。

是空:「メカって舞踏体とかあるじゃないか」
ヴァンダナ:「なに言ってるんですか。舞踏体は義体であってメカじゃありません!。メカって言うのは、こういうのを言うんです!!」

ヴァンダナがプレゼン機器を操作すると、スクリーンにI=Dや航空機の名称や主スペックが映し出された。それも、1つだけでなくかなりの数である。
その中の一つを拡大表示するとヴァンダナは、機体の説明を始めた。

ヴァンダナ:「この機体はですね・・・」

嬉々として機体の説明をしているヴァンダナと手元の資料を見比べながら、首脳陣の中でもメカ好きの者は”この機体作りてー”とか思い始める者が出始めていた。確かに今のFEGにはメカ成分が不足している!。
ヴァンダナが機体の説明を終えたころには、2時間ほど経っていた。

コゼット:「えーと、このメカは全部一人で設計を?」
ヴァンダナ:「一部手を貸して貰っているものもあります」
是空:「・・・・・・」

コゼットと顔を見合わせる是空王。続いて首脳陣の表情を一人ひとり確認していく。ヴァンダナの熱意に感化されたのか、何人かはメカの開発もOKよ、という顔をしていた。

是空:「OK、ヴァンダナ。これだけの数のメカ設計ご苦労だったな」
ヴァンダナ:「好きでやってることですから!」
コゼット:「まだ設計書を起こしただけですよね?」
ヴァンダナ:「はい。危ない機体もありますから」
是空:「その辺りは分かってるんなら大丈夫そうだな。シュミレーションするのも危ないかもしれないから、やる時は一言声をかけるよーに」

ヴァンダナが設計し、この会議に持ち込んだ機体にはいくつか危険なものも含まれていた。俗に言うTLOになりそうな機体である。

是空:「それと、各機体の性能を詳しく調べるから。設計書とかデータの一式を提出しとくように。危険性によっては関連データ含めて削除か、時が来るまで封印処理するから」
ヴァンダナ:「はい。すぐに提出します!」

データを提出するため、すぐに会議室を出て行こうとするヴァンダナ。

是空:「ちょっと待った。最後に一つ言っておく事がある。ここまでやってもらっておいてなんだが、持ち込まれたメカを開発するかどうかは、データの中身をもう一度精査してから決めるから。それに、他に優先度が高いアイドレスがあれば、後回しとかお蔵入りになる可能性もあるからな」
ヴァンダナ:「はい!」

なぜか嬉しそうなヴァンダナ。その様子を見たコゼットが首をかしげながら話しかけた。

コゼット:「今までの作業が全て無駄になるかもしれないんですよ?」
ヴァンダナ:「その時は、新しいメカを設計すれば良いだけですから。メカを設計できることが嬉しいんです!。では、失礼します」

ヴァンダナは爽やかな笑顔を残し会議室を出て行った。
これからも、彼は多くのメカの設計を手がけることになるだろう。なぜなら、それが彼の幸せに直結しているのだから。

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